課題担当者インタビュー

池田製茶株式会社 担当者インタビュー

池田製茶株式会社 専務の池田研太さん

池田製茶株式会社 専務の池田研太さんは、全国茶審査技術競技大会において茶審査鑑定技術十段位(最高位)を取得されている「茶匠」。十段位の取得は製茶業界の中でも至難の技といわれている。その「茶匠」自らがお茶を淹れることもあるという「池田製茶天文館本店 鹿児島茶カフェ 桜の詩」。こちらで同社専務 池田研太さんに今回のアワード課題テーマ等についてうかがった。

池田製茶株式会社イメージ写真1池田製茶株式会社イメージ写真1

―よろしくお願いいたします。「茶匠」の十段位すごいですね。

池田:ありがとうございます。歴代においても9名しか取得者がいなかった段位なので自分でもありがたいことだなと思っております。お茶の品質やブレンドなどに関し今後も精進していきたいと思っています。

-その「茶匠」の池田さん自らアワードに課題提供いただいたわけですが、応募するきっかけは何だったんでしょうか?

池田:はい。今回は「急須」を課題として出させていただいたのですが、そもそも急須自体のデザインが今の日常に合わなくなって来たというか、食卓にマッチしなくなって来た部分があると思っているんですね。ちゃぶ台や畳の上の座卓の時代とは違って、スタイリッシュなダイニングテーブルで椅子に腰掛けてという時代とのミスマッチです。そんなことをちょうど考えていて、新しい急須の形を模索していたところだったんです。そのタイミングでアワードの課題提供のお話をお聞きしまして。

-なるほど。

池田:「かごしまデザインアワード」については昨年、セミナーなどに参加をさせていただいており、デザインのレベルが結構高いなぁと思っていたんです。審査員の方やセミナー講師の方もプロの方が見られてるというのもあって、実用的な部分を重視しているアワードなんだなと。そこは凄く気にいっていた感じだったので、すぐに課題提供での参加を決めました。

-ありがとうございます。では、具体的に作りたいと思われている「急須」のポイントをお聞かせ願えますか。

池田:まず、普通の昔ながらの急須って横に持ち手が付いているんですが、これ基本右利き用なんですよね。右手で持ち手をにぎり、それを軸に急須を回転させてお茶を淹れる。後ろに持ち手のついている急須もありますが、これは右利きでも左利きでも使える用に考えられています。ただ、いかんせん茶葉を回しづらかったりします。

-そうなんですね。

池田:小学校とかに急須を持参して、お茶の淹れ方を教えに行くんですが、最近の小学生はこの右手に持ち手のある急須を持って、手首をまわしてお茶を注ぐ動作ができない子が多いんです。手首を返せないんです。なので、身体ごと傾ける。これは海外の方も同じらしいです。それで、なんでかなあと思っていたら、先日、面白い話を聞いたんです。ドアノブがあるじゃないですか、ドアノブって昔、ガチャって回して押したり引いたりするのが主流だったのですが、いま殆んどみかけないですよね、回す形状のもの。取ってのところを押し込んだり、引き戸であったり、自動ドアであったり、この回す形状のドアノブが少なくなって来たから子供達ってこの「手首を返す」動きが出来ないらしいんです。

-なるほど。面白いですね。

池田:この「手首を返す」って動きは急須でお茶を淹れるためにはすごい重要なんです。茶葉を対流させて回さないといけないですから。その辺の一連のお茶を淹れる流れとかも加味したデザインだったりすると嬉しいかなと思います。本格嗜好を目指したいと思っているんですが、それは、使いやすくて美味しくお茶を淹れられるというのが前提だと思いますので。人って正直で、デザインが優れていても使いにくいとやっぱり使わないですよね。

池田製茶株式会社イメージ写真3

-茶葉を対流させてまわすというお話がありましたが、急須の容器の容量などはどれくらいが適当なんでしょうか。

池田:そうですね。なるべく茶葉が広がり泳ぐスペースが広い方がよいと思うので最低120ccくらいの大きさが必要かなと思います。ちなみに今回の急須は鹿児島が深蒸し茶の産地ですので煎茶用を考えています。一般的な煎茶の急須は250ccくらいです。あと、今、お茶を飲まれる方ってマグカップで飲まれる方も多いと思います。ですのでマグカップに満たすためにも量はそこそこ入った方が良いのかなと思います。あ、カップや湯のみと急須をセットで提案いただくことなんかも面白いかもしれませんね。

-なるほど。急須としてはずせない機能として「茶葉が対流すること」以外で何か他にありますか?

池田:はい。今回、素材を限定させてもらったのですが(注:凹凸のある焼しめ急須や陶器急須の素地)その理由としては、急須内面に素材の凹凸があることや、ざらつき感が重要だからです。そこにお茶がぶつかって適度に渋みが軽減され、相対的にうま味成分が増え、味がまろやかなりますので。それ以外は逆にいままでの既成概念をとっぱらって自由に発想してもらえるとうれしいです。

-ありがとうございます。そういえば、子供のころ急須の蓋をよく落として割って怒られた記憶があるんですが、蓋は重要ですか。

池田:蓋割っちゃう人、多いですよね。割らない工夫があれば確かに面白いかなと思います。最近は蓋のない急須もあるんですが、蓋がないと今ひとつコクが出ないように思います。茶葉を対流させる時にちょっと揺する、お茶を踊らせる為に少しスナップを効かせるんですけど、そういう動作をするときには蓋は必要なんだと思います。あとひとつ言えるのは、水分を含んだ茶葉は酸化しやすくなるので、開けっ放しよりは蓋があった方が良いように思いますね。

-なるほど。さて、この急須のターゲット層はどういう方を想定していますか。

池田:そうですね、30代が中心で20代後半から40代、50代の方。その中でも結構アクティブな方々にこの急須を使って、もっとお茶に親しんで欲しいと思っています。

池田製茶株式会社イメージ写真3

-販売先の想定ってどの辺りをイメージされていますか。

池田:東急ハンズさんのような雑貨店や、あとは家具屋さんや家具類も扱っているような雑貨店とかも面白いかなと思っています。もちろん、自社店舗やネットショップでの販売はしたいと思います。店舗の様子など、お知りになりたい方はぜひお越しください。あとは海外ですね。今、海外向けで鉄瓶がすごく売れているんですよ。カラフルな感じの鉄瓶なんですが、紫色の鉄瓶だったりとか、真っ黄色の鉄瓶であったりとか。日本ではちょっと奇抜だなって思うものも支持されているようです。そういうのが売れる需要はあるので海外展開も視野に入れています。

-最後に応募者の方へメッセージをお願いします。

池田:はい。お茶を美味しく淹れて飲んでいただくとすると、伝統を重ねてきた右持ち手の急須の形がもしかしたら究極形なのかもしれないとは思っています。ただ、自分達のような製茶業界のものでさえ、このフォルムが時代やインテリアに合わないと感じているので、これが一番の理想の形かもしれないけれど、どうしても使いたくならないというジレンマがあります。ですので、ぜひ、私達が今までに見た事のないような、斬新で機能性があってお茶が美味しく淹れられる急須のデザインをお願いします。テーブルに置いた時にスゴく映えるというか、その急須自体が主役になるようなものが出来たらうれしいなあと思っています。そこに置いていたらお茶を淹れたくなる急須。そんなのが理想ですね。よろしくお願いします。

―ありがとうございました